この本にはネットでは未発表の四つの短編小説とふたつの小さな詩が収められています。四つの短編小説の主人公はすべて女性。それぞれの物語の中で主人公の女性たちは待ち望んでいます。終わりと始まりを同時にはらむ破壊の時がやってくるのを。

 四人の女性はそれぞれの過去から抱きつづけてきた愛をこれ以上は育てられないほどに大切に大きくしてしまい、自らの愛が爛熟したことに圧倒されはじめています。自分の腕に抱ききれなくなった愛を撫でさすりながら、いつかその愛が破裂して自分もろともどこかへ吹き飛ばしてくれることを夢見はじめる、飽和の時の中でウットリとまどろんでいるのです。

 「ジャックと豆の木」が、ジャックが育てた空にも届く大きな豆の木を、スルスルと昇っていったことを男の子の物語であるとするなら、これら四つの小説はすべてを包み込む巨大な果実を育てる女の子の物語として見立ててみたいと思います。膨らんで熟した大切に育てた果実の爆発に、自らの身も破壊されつつ新しい種を生み出し、再び抱こうとする女の子の物語に…。 オンナたちは抱き、生み出し、育てた愛の破壊をもって、再び新たに生まれ変わろうとしているかのようです。

 四つの小説の間に栞のように挟まれた二つの小さな詩は、彼女たちが静かな緊張感のある時間を生きていることを示しているかのようです。この本を手にとって読み始めると同時に、読み手は四人の女性たちの視線を手に入れて小説の世界に引き込まれることでしょう。静謐な時間、ぴーんと張り詰めた糸のような空気、永遠を含む刹那の世界へ。溺レルオトコを見つめていたアナタが、この世界に溺レルことになるかも、しれません。

―― ようこそ、ミメイ・ワールドへ。

(ゴザンス編集部:スギモトキョウコ)