俺は流される
時代や流行や世論や感情に
そう
オマエとの関係にも

俺が
こっけいに手足をばたつかせるたびに
不様に鼻や口から水を吐き出すたびに
みじめに命乞いの言葉を叫ぶたびに
オマエは
薔薇のつぼみがほころぶように微笑む

俺が流されて行く姿を眺めるのは
そんなに嬉しいかい?
冷たい水にぶるりと身を震わせる俺の姿は
そんなに面白いのかい?
少しづつ少しづつその身を沈めながら
溺れ続ける俺を見つめるオマエは
やわらかなベッドで抱き締めてやる時よりも
ずっとずっと楽し気で
まるで
鼻歌でも歌いそうなそぶりじゃないか

横たわったまま
目を開ける事も出来ずに
朽ちてゆく俺のニクタイ
頭の上を流れるその水は
まさしく
この世の甘露
色褪せた太陽は
俺の体を
ぬるくあたためる

俺は溺れる
快楽や誘惑や自堕落な生活に
そう
オマエとの関係にも


*****
危険なものに近寄らずに上手に逃れる事が出来る事が動物の持つ本能ならば、「開けてはいけない」「見てはいけない」と言われたものであればあるほど魅了されてしまうのは人間だけに与えられた本能なのでしょうか?
ミメイさんの作品を読んでいるとハメルーンの笛吹きの音色に誘われた子供のように、ふらふらとどこかに連れて行かれそうな気持ちになります。
私はこの本を一気読みには出来ませんでした。
もしこのまま読み進んでしまったら、この世界から2度と逃れられなくなってしまうような錯角を覚えたからです。
綺麗なりんごをかじってしまったお姫様のように、おいしそうな匂いと綺麗な色に「読まされてしまった」一冊でした。
稚拙な詩モドキを感想に代えさせて頂きます。