「家鳴り」がいちばん好きです。家に染み付いたような「母」と、娘のつながり。 姑から冷たくあしらわれ、夫からも真の愛情を受けることなく、家と一体化していく母親。そんな母親と同一化する娘。姑から何かをぴしっと言われ、口元をかすかに歪めるところは、すごい、です。

そして夫が亡くなり、静かに寝ている母親。家に少しでも脅威を与えるようなできごとがあると、うなるような声をたてる。家に脅威を与える者が去ったり破壊されたりすると、家とともに笑い声をたてる。

女の性(さが)が、ぞくぞくと感じられました。わたしも母の立場でしたら、あのように、毎日黙って家を磨きつづけると思います。そして娘の立場でしたら、あのようにもくもくと母を家を守り続けると思います。悲しい、というのでなく、昔から延々と続いてきた、女の執念みたいな。

鈴虫が印象的でした。そして子どもをはらむ主人公と。すべてが呼応しあい、「家、母親、娘」が立体的に、まるで自分が家のなかにいるように感じられます。姉とその子。グイ。(この静かな家にくいこむような名前です)セールスマン。「家」と比べるとすべて明るく、傲慢で軽薄。

生理的にぴったりくる、といいますか、わたしとしては、この「麻子」さんのような暮らしをずうっと続けてみたい気持ちがどこかにあります。静かな、沈鬱な、情念が潜んでいるような。こんな情念なら、静かではありますが、誰をも倒して(?)しまうでしょう。ニンギョヒメの祥子さんは、もっと白い感じですが、その「白さ」が却って不気味といいますが、すごいといいますか、これは「家鳴り」と違って、主人公が外から見ているわけですが、同じ女性の情念が感じられますね。わたしはしかし、自分のなかにこうした情念みたいなのがあると、見ようとしないで否定してしまうことが多いのですが、それを追求して、堂々と、うつくしく描くことができるミメイさんにはいつも感嘆の気持ちと、「ありがたい」という気持ちを抱いています。
つまり、こんな生き方もアリなのだな、という…。

つたない感想ですがお送りします。
こう。


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