「クラフト・エヴィング商會」とは、
吉田篤弘さんと浩美さんというご夫婦を中心とした制作ユニット。
何を制作しているか、といえば、「本」
本の「制作ユニット」というのも、なんだか不思議な気がするのだけど、
創られている本そのものも、ちょっと不思議なものばかり。

ありそうでなさそうな(あるいは、なさそうでありそうな)どこかの国の、
ありそうでなさそうな(あるいは、なさそうでありそうな)物語、
その物語において、重要な役目をになっているのが、
これまたありそうでなさそうな(しつこい?)極上の(摩訶不思議な)品々。
その品々(まるでオブジェのような)も、ちゃんと制作されていて、
それを写真に撮ったものが、文章と共に1冊の本になっているのだ。

つまり、本でありながら、アート。アートでありながら、本。
アートと物語が一心同体となっているような本なのだ。
だから、何度でも読みたくなる。
ふと、本を開いてみたくなる。

すべてにおいて手間暇かかっているし、好きなこととはいえ、
それを妥協せずにとことん追究するのは大変なことだと思うけれど、
でも、やっぱりそれって大事なことだよね、と思う。
ここまでやってくれるなら、文句はない、
多少定価が高くたってまぁいいじゃないか、と、読者は思う。
まぁ、こんなもんか、とどこかで諦めて放りだせば、
それはやっぱり読み手にも分かってしまうものなのだ。

何より、一度手に入れたら、もう手放す気にはなれないし、
本棚から何度も引っぱりだしてはためつすがめつ見てしまうのだから、
決して高い買い物ではない。
だから、「クラフト・エヴィング商會」には熱烈なファンが多い。

2001年には講談社出版文化賞・ブックデザイン賞を受賞し、
書籍の装丁家としても活躍されているのだから、
このユニットのセンスがどんなに素晴らしいものかは、よって知るべし。