近ごろのイチオシ作家、石田千。
「大踏切書店のこと」で第1回古本小説大賞を受賞した後、
主にエッセイを書かれている。
あたしがこの人の名を知ったのは新聞に掲載された「月と菓子パン」の書評で、
ずっと気になりつつも、なかなか出会うことができなかった。
が、文庫化されたのを機に読んでみたら。
これが、すごくよかった。

下町に暮らす著者の目から見た、日常の風景、そこに暮らす人々(時には猫)が、
易しい言葉で綴られている。
が、その平易なコトバというのが、実はクセモノ(?)で、
じっくり読んでいくうちに、石田千ならではの文章(やリズムや空間)に引きこまれ、
いつのまにか著者の目と自分の目が重なってしまうのだ。

石田千の文章には、微妙な省略がある。
やさしい言葉で読みやすい文章で書かれているから、それとは気づかないのだけれど。
書かずとも分かることは書かずにいる。
全てを語らずに、分からせる。
つまりは読んでいると自然に読み手は「想像力」を使うことになり、
だからこそ、より鮮やかにいろんなものが見えてくるのだ。

一番読みやすいのは「月と菓子パン」。
この本が面白い、と思った人は、「ぽっぺん」や「部屋にて」を読んでみてください。
特に「部屋にて」は、石田千独特の世界が強調されているから、
もしかすると、「?」と思ってしまう人がいるかもしれないけれど、
「空間」や「行間」を読むのが好き、という人にとっては至福の時を得られるはず。
ぜひぜひお試しを。