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1年2組の担任だったゆみこセンセイは、うさぎに似ていた。
というような原稿を書いていて、そういえば、と思った。
そういえば、うさぎは確か「1羽2羽」と数えるのじゃなかったっけ、と。
うさぎは「動物」なのに、なぜ「鳥」のように1羽2羽と数えるのか。
いつか調べようと思っていたのに、すっかり忘れていた。
うさぎを数えることなんて、めったにないものだから。

PCに入っている辞書で「うさぎ」とひいてみる。
『「一羽(イチワ)…」「一匹…」と数える。
 二羽を一単位とするときは「一耳(ヒトミミ)…」と数える。』
ヒトミミ?
しかも『二羽を一単位とするとき』というのは、いったいどんな時なのか。
謎はよけいに深まるばかり。
こういうときは、やはりネットだ。
検索して、あちこちのサイトをのぞいてみる。

うさぎを1羽2羽と数えるのは、
『仏教の掟として動物の肉を食べてはいけないとされていた』為だという。
うさぎを「動物」ではなく「鳥」とみなして食していたのだ。
だから、鳥と同じように1羽2羽と数えていた。
そして、その後。
徳川綱吉が「生類哀れみの令」を発したときのこと。
「獣の肉」を食してはならぬ、というお達しにより、
人々はうさぎを獲れなくなった。
が、とある町の知恵者が2匹のウサギを獲り、
「これはウ(鵜)とサギ(鷺)の二羽の鳥だ」と称して食べたのだという。
それ以降、うさぎは、
2匹(番:つがい)単位で数えることとなったのだ。
2匹でヒトミミ(一耳)。
だから、うさぎ1匹のときは「片耳」というのだとか。

「つがい」が1単位。
そんなふうに数えられるイキモノは他にはいない(たぶん)。
2匹いて初めて「ヒトミミ」と数えられるなんて、なんだか変だ。
1匹でいると「片耳」だなんて、ちょっと哀しい。

ヒトがもし、ふたりで「一人」と数えられるイキモノであったなら、
ふたり一緒にいて初めて「ヒトリ」と認められるのだとしたら、
世界はいったいどうなっていただろう。

そんなことを考えているうちに、ぼんやりと見えてきた。
物語の輪郭のようなもの。
一太郎に戻って新しい頁を開き、ゆっくりとタイトルを打ち込んでいく。

『うさぎの数え方』

物語は、いたるところに潜んでいる。




―2006.1.27.blog「トルニタリナイコト」―