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夜中に爪を切ってはいけない。
そう言われたのは子どものころ。
オトナになってから、
爪を切るのは、いつも夜中だ。

寝静まった夜の中、
爪を切る音は思いのほか大きくて、
思わず身をすくませる。
淀んだ夜気が、
聞き耳を立てているような気がして、
辺りをうかがってみたりする。

部屋のドアを閉め切って、
ぷちん、ぱちん、と爪を切る。
なぜか後ろめたく、
何かを畏れて、
そっと隠れて爪を切る。

切り終えて、両手を高くかざしたら、
わずかにあいたカーテンの透き間から、
月が見ていた。
切りたての爪のような鋭い三日月が、
じっとアタシを見つめていた。