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WEBで、古い道具ばかりを扱う店を見ていたら、
目にとびこんできた、小さなスプーン。
じりじりじりじりねじれていて、
その先っぽには、
赤や黄色や青色のあめ玉みたいなプラスチック。

そうそう、こんなのあったっけ。
懐かしスプーン。

いや、そうじゃない。
スプーンじゃなくて、匙だ。
おさじ。
もっと小さい頃は、「おしゃじ」だった。

半透明の白いカルピスは、
硝子の「コップ」で飲んでいた。
「グラス」なんかじゃなくて「コップ」だった。
両手のひらでコップを持って、
ごくごく飲んだ、薄いカルピス。

炬燵は、「おこた」で、
保温ポットは「魔法瓶」
魔法瓶の中は、
ぺかぺか銀色に光っていて、
自分の顔がひしゃげて見えた。
それがいかにも「魔法」っぽくて、
銀色の底の奥底に、魔法使いがいるんじゃないかと、
秘密の通路があるんじゃないかと、
用もないのに蓋をあけては覗きこみ、
そのたびに母に叱られた。


今だって、
スプーンもグラスも炬燵もポットもあるけど、
それはまったく違うもの。
同じように使ってはいても、
あの頃のそれらとは、ぜんぜん違う。
色もカタチも、ぬくもりも。


いつのまにか、消えてしまった。
みんな、なくしてしまった。

懐かしくて、心安らかな、
愛おしいモノたち。