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葉牡丹は、どこか珊瑚に似ている。
陸にあがった珊瑚。
あるいは、青果市場からはぐれた野菜。
やはり、その実「花」ではない。
ほんとうはキャベツの仲間だという。
でも葉牡丹は、そんなことなどすっかり忘れて、
「花」のような顔をして咲いている。
植え込みの中、似たような顔を並べて。

短大を卒業するとき、葉牡丹を植えた。
毎年卒業生が、校舎の前の花壇に
何か植えることになっていたのだ。
そしてあたしたちは葉牡丹を選んだ。
植えるのが、簡単そうだったから。
ただ、それだけのことで。

遊ぶことに忙しいあたしたちは、
花なんてどうでもよかった。
恋に忙しいあたしたちは、
花なんかに構っていられなかったのだ。

花より恋。
花よりオトコ。


海を忘れた珊瑚のような、
はぐれた野菜のような葉牡丹たち。
あの葉牡丹は、
ちゃんと地に根をはったのだろうか。
彼女達は、
もうはぐれていないだろうか。
そして、あたしは……。