「ジャージの二人」長嶋有


別荘とは名ばかりの、おんぼろな家で夏を過ごす、父と息子。
と言ったって、可愛い坊やとお父さんの話ではない。
ふたりとも、もう「いい歳」なのだ。
父親は3度も結婚していて、しかも、その1度目の
結婚の時に生まれたこの息子は無職だし、おまけにその妻は、
一世一代の恋愛中(もちろん夫以外の男に)だというし。

パジャマ代わりに古着のジャージ(しかも胸に学校名)を着る父子は
どうにも冴えなくて、どこか江國香織の「間宮兄弟」のようでもあるけれど、
でも、もっとリアルに冴えなくて、情けない。

だけど、二人の会話や時間の進み方が、やけに普通で、ごく自然で、
読んでいるうちに、いつの間にかその空間に馴染んでしまう。
この冴えない男達がなんだか愛しくなってしまうのだ。
(それってどうよ、とも思うけど)

スタンドのかさの裏をゆっくりと歩くアシナガグモ。
暗闇に聞こえる、麻雀ゲームの「ツモ」という合成音。
ジャージの胸に書かれた、小学校の名前。
畑の真ん中で、空に向かって腕を伸ばす人々。
なぜかどれもが、いつか見た光景のようにも思われて、
どうしてだか哀しくなってくる。
覚えのある可笑しさに、けたけたと笑いながらも、
胸のどこかがしんと淋しい。

3年後、5年後、この父と息子はいったいどうなっているんだろう。
この続きを読んでみたい。


*この書評(というか、感想文だけれども・笑)は、bk1書評ポータルに
「今週のオススメ書評」(2007/03)として掲載して頂きました。